MCU作品 観ておもったこと フェーズ3(後編)

2021/10/14

映画

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この記事はこの記事の続きでございますので、未読の方はまずそちらからお願いいたします。


ということで前に書いた、MCU作品を観ておもったことの続きを書いていきます。今回はフェーズ3の後半、残り全部ですね。これでこの記事もおしまいです。それではさっそくやっていきましょう。


※そんなにネタバレをしてはいないつもりですが、たぶんしていますので、そのへんは割り切っていただけるとありがたいです


19.アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年)

詳しくはこちら

タイトルから察せられますが、MCUのメインストリームであるアベンジャーズ全体の話になります。このあと「エンドゲーム」に連なっていきますが、実質的にこの二作品は前編後編って感じなので、MCUシリーズの最終章、という考え方でいいと思います。

なんとなく世間評価を見ていると、この作品が一番評判がよいように思えます。それもそのはずで、この話の結末は、確かに衝撃です。映画館から呆然と出てきた人が多かったというのもうなずけます。僕もびっくりしました。

よいところは、ようやく今までのすべてのヒーローが噛み合うところですね。「シビル・ウォー」の時点でもかなり勢ぞろいはしていましたが、ソーやハルクという足りないメインどころはあったわけで、ここは嬉しい。厳密には出てこないのもいるんですが、出てこない理由はわかる、って感じです。

そして過去作からじわじわ存在感を増し、いよいよラスボスとして降り立つサノスの圧倒的パワーが、『マイティ・ソー』にはじまって種まきしてきた「宇宙のほうのMCU」として「地球のほうのMCU」にぶつかってくるのも楽しいです。この、「なんだかんだ味方が勝つんでしょ?」感のなさ。敵、つよっ!感のやばさ。過去作が様々なレベルの敵を出してくる中で、しっかりナンバーワンを出してくれました。

しかも、それぞれがしっかり出番を持っている。というか、それぞれの出番がないと話がうまく回らないから、先にそれぞれの作品を作った、と思えるような采配具合です。いやー今まで全部観てきてよかったなーって感じです。とくにドクターストレンジ。あれは単体ではそんなに好きじゃないけどあの新概念を単体で観ておかないと、ちょっと拍子抜けしたと思います。

そういうわけで僕がずーっと言ってきた地球と宇宙の二種類のスケールの融合という形をいかんなく発揮してくれた作品なもので、大満足です。途中、ここは他と比べてバランスがおかしいみたいな文句もつけましたが、ここまでくればかわいいものです。うれしいなあ。

ということで100点をつけたいんですが、ちょっとそこにはブレーキです。というのも、この「衝撃の結末」というのが、まあ、「後編につづく!!!!」みたいな丸投げでもありまして、確かに頭をガツンとやられたんですけど、これの回収が真価だぞという感じが強いからです。展開としては100点で、しかしこれは結末でない、そこでこの映画は終わった。みたいな。

ということで単体としてもシリーズとしても90点です。正直、この作品の周囲の評価がよかったので全部観る気になったというのが発端なんですが、評判に偽りなしでしたね。


20.アントマン&ワスプ(2018年)

詳しくはこちら。フェーズ2の最後を飾った『アントマン』の続編ですね。

『アントマン』といえば、コミカルでいてMCUの世界観とのズレもなく、作品にいいユーモアをもたらしてくれた快作という印象ですので、この続編も楽しみでした。『アントマン』ではアントマン自身の話を拾うのでいっぱいいっぱいで、その周辺で拾っていくべきストーリーは見えていました(ちなみに、博士の奥さんをさがしにいくという線です)ので、やるべきこともあるし、マンネリにはならんだろうという期待も大きくありました。

結論、話としては楽しめました。ソーにせよアイアンマンにせよ、MCUの二作目はなんか設定がガバガバっとなる傾向にありまして、そこに関してはまあこれもそうなんだよなーというところはありつつ、やっぱり「小さくなって戦う」ことをメインに据えている作品の、他とは違うアクション映像が面白いです。ユーモアも効いていて、観ていて飽きません。アイデアがとにかくたくさんあって、いい続編だなーと思いました。

アントマンはさきのインフィニティ・ウォーの出番はなく、そのためこの話は「そのころアントマンは・・・」という文脈でもあるのですが、インフィニティ・ウォーの重さを引きずらない、最初から最後まで軽快な話運びが、特によかったなあと思ったところです。

思ったんです。

思ったので・・・

やっぱなー、エンドロールで結局「インフィニティ・ウォー後のアントマン」をやっちゃったのは、この話単体の「よかった!」を削いじゃったと思うんだよなあ・・・もちろん、あのシーンは『エンドゲーム』でアントマンがどう立ち回るかにおいて超重要シーンなのは認めますけど、「インフィニティ・ウォー後のホークアイ」はちゃんと『エンドゲーム』の冒頭にやったじゃんかよー。まあ、この作品であらたに顔出しできたキャラクターも巻き込むためなら、ここでやるしかないとはいえなあ・・・

という、まさかの「エンドロールで本編の楽しさを根こそぎ持っていく映画」ですので、苦手な人は心して観たほうがいいと思います。

これが影響して、僕の中では単体75点、シリーズ80点って感じです。や、こういうのがいいって人もいるんだろうけどなあ。さすがに全体にこの単品を奉仕しすぎだろ・・・


21.キャプテン・マーベル(2019年)

詳しくはこちら。なんとここにきて新ヒーロー投入です。

嘘でしょ、と普通ならなるんですが、『インフィニティ・ウォー』の敵であるサノスが強すぎて、味方が増えることはもうありがたさの極み、みたいなところがあるので大丈夫です。むしろキャプテンマーベルはその切り札的な役割を買って出ます。ちなみに時系列的にはかなり昔になります。後々につながっていくシーンも見えて、嬉しいです。とくにね、あの人ね。『アベンジャーズ』で退場したあの人・・・

この映画の特徴を一言でいうとするなら、マーベル最強です。

マーベルが強すぎる。

もうね、苦労とかないです。いやあるけど、苦境です。苦労ではない。マーベル強すぎるから。「俺Tueee」みたいなのって流行りましたが、そんな感じです。それは制作側もしっかり狙っているところだと思います。

たぶん、この作品がMCUの最初の方に出てきたら、全然面白くなかったです。全然は言いすぎか。強すぎるヒーローってそれだけで面白いもんね。ただ、のちのシリーズ運びの難易度はえげつないことになってしまったでしょう。だって、大概の敵はマーベルがボコって終わりでしょうから。とにかくそんくらい強い。ノー・ダウトってバンドの「ジャスト・ア・ガール」って大好きな曲があるんですけど、これに合わせて無双しているシーンは、めちゃくちゃ楽しかったですが、あれ僕いま『キック・アス』観てる? みたいな気分になりました。

楽しいは楽しいんですが、ちょっとこの映画、「ポリコレを意識しすぎた?」と思う部分もあります。マーベル、自分のために戦うヒーローなんですよね。普通のヒーローみたいに「誰かのために」みたいな感じがない。そんで女性。確立される「強くて自立した女性像」があるわけです。ちなみにマーベルの相棒かつ親友ポジションをとるのも、強くて自立した黒人女性であります。

まったくこういう演出を否定するつもりはないです。が、セリフや構図の節々から、なんか制作側が全面に出しまくっている感じがあって。ある意味『ブラックパンサー』にもポリコレ要素はあったんでしょうけど、そうはいってもMCUの世界観をふんだんにつかったヒーロー映画ではあったわけです。『キャプテン・マーベル』は、ヒーロー映画としての面白さを、「制作側が言いたそうに見えるメッセージ」が食ってしまっているようには感じました。

そういうわけで単体としてもシリーズとしても75点くらいです。


22.アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年)

詳しくはこちら。いよいよ最終局面です。

『インフィニティ・ウォー』のときに散々書きましたが、これにてMCUのひとつのピリオドが打たれる作品です。3時間あってめっちゃ長く感じました。

感想は、まあ、よかったかな・・・? くらいです。

いいところは主に二点。今作ばかりは出ないキャラがいては仕方ないので、本当にみんな出てきます。これは嬉しかった。さすがに数が多すぎて、みんなにきっちり見せ場があったかといわれるとちょっと厳しいですが、全く見せ場のないキャラはいないんじゃないでしょうか。それだけでまずすごいです。

そして、ざっくり言うと「過去改変」のガジェットが効いた前半から中盤にかけて。過去作のあのシーンこのシーンをネタにしての再展開は、見てきたファンを間違いなく喜ばせるものだと思います。僕もすごく楽しみました。後付けの伏線回収みたいなおもしろさがありますよね。このへんの理論はもはやガバガバではありますが、『マイティ・ソー ダークワールド』よりはすんなり理解できるので悪い印象はありませんでした。

それぞれがいろんなところで大いなる方向に立ち向かい、そして最後の激突的な決戦になだれ込んでいき、切なさの残る終戦へ、プロットも非常にしっかりしています。やはりアイアンマン、キャプテンアメリカの二者はメンバーの中でも別格の位置づけだったのか、たいへんきちんとした個人のストーリーの決着を用意されており、それがよかったのかはともかく、あー終わったなあと思えるものでした。

ということで全体的な感想で行くと文句はないんですが、やっぱりこれだけのキャラをなんとかしようとすると、粗も見えてくるものです。

例えばソー。やっぱり『バトルロイヤル』でお笑い路線に行ってしまったことが、今作の路線を決定づけてしまった気がします。『エイジ・オブ・ウルトロン』のときはもっとりりしかったじゃん! これでよかったのか。

あとブラック・ウィドウ。ガモーラ。ロキ。そういう扱いでよかったんすか?

どうしても雑に扱われてしまったというか、プロットの闇に吸収されてるなここ、みたいに思うところはあり、面白いけどなあという印象です。

とはいえ、監督もそれぞれ、世界観もそれぞれの作品たちをここまでまとめてくるのは大したものだと思いますし、いろんな人の思惑をハンドリングしながら物語っていくダイナミズム的なものを観させてもらった気はしています。それこそが長々とここまで書かせた動機なんだろうなと思います。

確かにエンドゲームは完璧ではないです。完璧だったら、「見てくれ」と布教するマシーンになっていたと思います。ですが、やりきって、ケリをつけ切った感は見事にあって、そこはたたえたいなというのが感想になります。

単体としてもシリーズとしても、85点です。


23.スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019年)

詳しくはこちら。なんとびっくり、フェーズ3の最後はこれなんですな。

前作『ホームカミング』から引き続き、少年パーカーとしてのスパイダーマンが活躍を見せます。とはいえ『エンドゲーム』を経ており、経験値も上がった模様。アイアンマンの後継者的なポジションとして、成長過程ですが期待ができるヒーローの作品がここに来ること自体は順当でしょう。

感想ですが、やっぱり好きです。

前作で書いたこととして、身の丈が合っているというものがありました。MCUのスパイダーマンは、強さ的には少し劣る。しかし、「親愛なる隣人」を掲げた街のヒーローという小規模観をうまくストーリーに落とし込めている、というところがあります。

この「身の丈」が、今回も絶妙です。もちろんスパイダーマン自体も強くはなっているのですがまだまだということで、スケールは大きいながらも敵はCGを駆使した「はりぼての敵」です。もっともこのCGが、はりぼてながら非常に強力で、このあたり「はりぼてはしょぼい」というイメージを覆してくれました。それは昨今の技術力の進歩を感じさせるもので、パワー的ではない科学による敵、という、ありそうでここまでのものはなかった領域が展開されます。そしてそれに対峙するヒーローのレベル感として、スパイダーマンはすごくちょうどいい。

アクションシーンも面白く、終始楽しく観ていられました。青春要素も邪魔にならず、いい感じです。

とはいえ、『エンドゲーム』の後の感じは薄かったです。もちろん、あそこで発生した犠牲のあとの世界ということで、要素としてはむしろてんこもりなんですが、あのとき活躍したヒーローの余韻はほとんどなく。まあ、そういうものを「スパイダーマン」を冠する映画に持ち込んでも仕方がない気がしますが。

むしろ、エンドロールの感じからも、フェーズ4に向けてやっちゃうよ! という意気込みがすごく感じられた作品でした。あくまで『エンドゲーム』は区切りでしかないよ、みたいなね。

フェーズ4を見られていないので、単体として90点、シリーズとして85点という感じです。


ということで、全作レビューしてきました。ある程度思っていたことはあったんですが、こうやって整理するとちゃんと見えてきていいですね。

個人的には、このフェーズ3でMCUは完結でもいいのではくらいには満足したのと、フェーズ4は映画やらドラマやらいろんなメディアの展開があって正直追うのがめんどくさい(このへん、ディズニーのよくないところ出てると思います・・・)ので、全部追えはしないんだろうなということを考えると、まあ僕の中では終わりでいいかなあという気はしています。まあそれでも映画化作品くらいは観るんだろうな。


というわけで以上です。ありがとうございました。


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