MCU作品 観ておもったこと フェーズ3(前編)

2021/08/18

映画

t f B! P L

この記事はこの記事の続きでございますので、未読の方はまずそちらからお願いいたします。


ということで前に書いた、MCU作品を観ておもったことの続きを書いていきます。今回はフェーズ3ですね。なんと11本もありますので2回に分けます。それではさっそくやっていきましょう。


※そんなにネタバレをしてはいないつもりですが、たぶんしていますので、そのへんは割り切っていただけるとありがたいです


13.シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016年)

詳しくはこちら。例によって映画.comのリンクをはっつけています。

先に言っておきますと、僕の中での最高傑作、これです。世間的な評価からしても、そんなに変なことを言ってるわけではないような気がします。

ざっくりとした話の構図は、今までも何度か出てきた「ヒーローをどうやって管理するか問題」が、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でいよいよ深刻化してしまった結果、ヒーローの中でも管理はしょうがないと思う派閥と、抵抗するぞの派閥が出てきたので、その二つがぶつかる話です。ついに内戦が起きます。

「ヒーローの管理」はどこかででかいテーマになるんだろうなという思いで追っていたので、やった~と思っていました。で、見事だな~と思う点が四つあって、

まず、キャプテン・アメリカがかっこいい。彼がタイトルに冠されているんですが、まあこの二大陣営はアイアンマンVSキャプテン・アメリカなのでわかるっちゃわかります。が、今まで優等生で通してきたキャプアメ、抵抗派閥なんですね。優等生は信念と合致していたからってだけで、このブレなさが(正直発言はうざったいものもあるんですけど)かっこよくてよいです。

それと、キャラがめちゃくちゃ多い。さきの二人のほか、ブラックウィドウ、ローズ大佐、ホークアイ、ワンダ、ヴィジョン、ファルコンに加えて、出てきたばかりのアントマン、さらにはブラックパンサーとスパイダーマンという新キャラも登場。これを二つに分けてぶつけるの、アツいです。

さらに、二つの陣営にヒーローたちに分かれていくのに引っかかりがない。しっかり筋が通っていきます。また、深刻な感じで動く既存のヒーローにまざって、コメディ担当ともいえるスパイダーマンとアントマンがいることで、重苦しすぎない雰囲気になっています。

最後に、ただの内戦というわけじゃなくて、その合間を縫って敵役がいて、最終的にはそいつの暗躍に流れていくというのもよいです。やっぱり内部でいがみ合って終わり、という脚本になっちゃうと微妙ですし。

と、ようやくいろんなヒーローをやってきたものが結実してこんなにお見事な作品ができたんだなあと感動しました。

もちろん不満もあるにはあります。まず、敵役はちょっとしょぼいです。しょぼいなりにすごい、という路線をやりたかったのは分かるんですが、やっぱりここの印象のバランス操作は成功したとはいえないかも、があります。

それと、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の時も思ったんですが、べらぼうに面白いんだけどソーやガーディアンズオブギャラクシーの面々といった宇宙組が出てきません。やっぱり、そりゃ地球サイドと宇宙サイドを両立した上で面白いものを・・・!というのを期待するところがありますので、今回もまたもそれではなかった、という気持ちはあります。

とはいえ単体としてもシリーズとしても95点です。こりゃーすごいです。というのと、今後はさすがに地球と宇宙をやらざるを得ないので、どうなるんだろうと期待が膨らむ作品でもありました。


14.ドクター・ストレンジ(2016年)

詳しくはこちら

ここにきて新ヒーロー投入です。しかも異色。時間と空間を魔術で操るという、またバカでかいスケールの能力者が投入されました。ゲームバランス、大丈夫でしょうか。雰囲気もなんだかアジアンな感じ、今までのシリーズからすると新しい風、という感じです。

話ですが、ぶっちゃけ面白くはないです。いや、面白くないは語弊があるなあ。要は、ヒーロー誕生の話なんですよ。しょうがないです。ドクターストレンジとしては一作目なんですから。ただ、「ヒーロー誕生の巻」ってどうしてもテンプレがあって、なんかこう、それ『アイアンマン』でやったぞ、みたいな展開だったりするのです。お手本だねーという感じです。で、主人公の性格もトニー・スタークっぽい傲慢さがあるのです。傲慢天才、あんまり好きじゃないので、こう、相性の悪い作品ではありましたね・・・

時間と空間が魔術的にしっちゃかめっちゃかになるということで、映像はみごたえがあります。よく言われますが『インセプション』をむちゃくちゃCGでやりまくった感じです。やりまくってるので、さすがにCG感が勝っちゃってますが、魔術なんだからまあ仕方がないですね。

この魔術、なにがどういう原理でどうなってるのかというのは、正直よくわかりませんでした(笑)そこそこガバガバなんだろうなあとは思います。感覚的になんとなくわかる、でふわっと観ていく話です。ほんと、それだけです・・・

なんかけなしまくってるので持ち上げますが、シリーズとして見たら、「こいつこの先どうやって噛むんだ?」というわくわくはすごかったです。ヒーロー陣営というよりは世界そのものを守る存在として、サードパーティ的に関与してくるんだろうなという描き方で、地球サイドでありながらやっていることは宇宙サイドのそれであり、この二つの両立に買ってくれる存在になるだろうな、という予感がありました。

ということで単体でみたら70点くらいですが、シリーズとしては80点くらいあります。


15.ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017年)

詳しくはこちら。続編ですね。

前作は、今までと違う軽いノリと宇宙ゴリゴリの舞台が一線を画していて単体としては面白いけどシリーズの中に位置づけたときはいやだ、という感想を書きましたが、今作はこれがびっくり、ノリと舞台のユニークさをそのままに、シリーズとしても観られる作りに仕上がっています。

特によかったのは、前作で掘り下げきることができなかった多くのキャラたちをもう一段階深彫りした脚本になっているところでしょうか。とってつけた続編というわけじゃなくて、前作をパワーアップさせた作品だと思います。主人公が実は・・・という王道展開でもありますが、楽曲センスやコメディタッチは健在です。

前作で気になっていたリアリティラインも、合っている感じです。むしろモブの命はめちゃくちゃ散るんじゃないでしょうか。あと悪役のエリザベス・デビッキがいいです。めちゃくちゃ背の高い方で、なんか悪役が似合うんですよね。怖いけど抜けてる、みたいなキャラがよく合うというか。『コードネームU.N.C.L.E.』のときも思いましたが。

まあ、前作の感じが大好きだー! という人からすれば、話が王道になりすぎだと低評価になってしまうかもしれません。とはいえこれはMCUというシリーズに位置づけられている作品なわけですから、そのラインが保ってきた引力の範囲内にはいてほしいというか。そういう意味で、たとえ展開や仲間との関係性が王道化したとはいえ、作品の雰囲気そのものを変えることなくやり切ってくれたのは、よかったなあと思います。

ということで、単体で見てもシリーズとして見ても85点です。


16.スパイダーマン:ホームカミング(2017年)

詳しくはこちら。いよいよスパイダーマンの単体作品です。

どれも原作付きのMCU作品とはいえ、ことスパイダーマンについてはハードルが高いものです。トビー・マグワイヤー演じたスパイダーマン三部作は僕の少年時代にしっかり印象づいていますし、その後の『アメイジング・スパイダーマン』では賛否両論だったりもしますし、どう組み込んでいくんだろうと気になっていました。

それが「高校生」そして「青春」の要素の中でヒーローをやる、という内容であった・・・ということは、『シビル・ウォー』でちょろっと出てきたスパイダーマンのキャラ付けから予想はできたので、そりゃそうだよねという印象ですが、それでもいやー新鮮だなあと好印象です。

ところで僕はこの作品というかMCUのスパイダーマンが大好きなのですが、それはこの青春要素とは別のところにあります。「親愛なる隣人」要素です。

もともとスパイダーマンは世界を股にかけて活躍するヒーローではなく、ピーター・パーカーの周辺の街をヒーローとして守る、という小規模な存在です。その要素をMCUの中で突き詰めた、というのが大きい。

MCUのヒーローたちはみんな強大で、大きな物語と戦うだけの力がある存在ばかりです。その中にこのスパイダーマンを入れると霞みそうですが、彼がまだ発展途上の存在であること、そしてアイアンマンことトニー・スタークに目をかけてもらい、次世代を担ってもらう育成選手の扱いとなっていることが、シリーズ内で矛盾を起こしていません。

そしてまた、敵役も絶妙にスパイダーマンのレベルに合っているのです。『アベンジャーズ』で攻めてきた宇宙勢力の残骸を回収して、ちょっとした兵器にして売りさばいているという「小物」です。しかしこの小物、ピーター・パーカーと意外な関係性にあり、という、スケールが小さいながらそのなかで精一杯のアクションと展開と成長を見せてくれます。しかも青春もあり。なかなか文句ないです。

まあさすがに、これだけスパイダーマンがつくられれば、脇役の造形などで「こうなっちゃったの?」があって受け入れがたかったりした要素もありましたが、そういう違和感を背負ってなおしっかり鑑賞できる良作だと思いました。難しい作品だからこそ、ゴリゴリにMCUのストーリーラインに組み込むことで独自性をとるという本作、僕は好きです。

ということで単体で見てもシリーズで見ても85点です。ここまで書いてきて、フェーズ3は単体で見て微妙な作品でもシリーズの力で面白く思えてくるなというのがありまして、やっぱり数を重ねるってすごいなあ、なんて思ったりしていたのでした。


17.マイティ・ソー バトルロイヤル(2017年)

詳しくはこちら。マイティ・ソーシリーズの最後ですね。

いやー、これ割と評価高いみたいなんですけど僕はだめなんだ。NGなんだ。

今回、完全に舞台は宇宙です。で、『シビル・ウォー』で出番のなかったソーとハルクの「そのころ」を描いている作品でもあるとは言えます。ソーの故郷ことアズガルドに対して一定のケリはつきますし、ちゃんと三部作としてストーリーのつながりがあります。

しかしですねー・・・これめちゃくちゃギャグ作品なんです。正直、宇宙が舞台というのもあって、完全にノリが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』です。

いや、面白いです。タイカ・ワイティティ監督さすがですよ。僕だって『ジョジョ・ラビット』は死ぬほど好きですよ。シリアスな筋も入れつつユーモアを入れてくるセンス、非凡なものがあると思います。

が、これ、「三作目」なんですよ。

やっぱり過去二作で積み上げてきた雰囲気と、あまりに舵を切りすぎています。ソーの父親のオーディンとか、そんな扱いでいいの? みたいな感じです。というかソーそのものがどんどんダメキャラになっていってしまっている気が・・・

飽きないし、面白いし、笑えるんです。笑えるんですけど、僕はこのキャラ達をこういう風に笑いたくなかったよーって思いながら笑う感じです。それが、つらかった・・・

軽いノリの作品は大事だと思います。思いますが、やっぱり『マイティ・ソー』のノリは保ってほしかったなあというのが正直なところです。とはいえロキのブレなさはさすがだった。あれは役者さんがすごいのかもしれません。

ということで、単体で見たら75点くらいですが、シリーズで見たら60点です。くそー。やっぱりずっとシリーズとしては調子がよかったので残念な気持ちはありました。


18.ブラックパンサー(2018年)

詳しくはこちら。『シビル・ウォー』で出てきたブラックパンサーの初登場作です。

やっぱり目を惹くのは、黒人ヒーローというところでしょうか。黒人がヒーローをやっていること自体はMCUとして初めてというわけでもありませんが、舞台はアフリカ、テーマも黒人、第三世界。しかも世界で一番技術が進んでいるのがこのアフリカの架空の王国ワカンダという設定。大自然の中に隠れている超技術。民族的な要素との融合。このあたり、映像的に文句の付けようがありません。

MCUというシリーズに新たな要素をまたも持ち込んでくれたという意味では『ドクター・ストレンジ』と共通ですが、『ブラックパンサー』のほうが、映像が地に足ついている印象です。また、キャプテン・アメリカの盾の素材はこのワカンダの金属だというのもあって、MCUの技術的設定を陰から支えていた世界がグッと出てきた、という点ではワクワクが止まらないものでした。

その上で申し上げますが、ストーリーは鬼ほど王道です。申し訳ありませんが、ザ・ありがち、です。また、終盤にかけて派手なアクションは意外と抑え目というところがあり、エンタメ映画としての盛り上がりがよかったかどうかというのは、ちょっと口ごもるところがあります。これが「18作目」だというのも、不利だとは思います。「この話運び、もう、ねえ?」という気持ちは、シリーズが負うべき責任であり、この作品が負うべきではないでしょう。

そう言う意味では、映像はよくてシリーズの世界観を拡張する良作だけど、ストーリーは平凡なんじゃないの、というところなんですが・・・なんというかこの作品、MCU作品で一番「叩きづらい」ところがあるんです。

なんせ興行収入も抜群、ヒーロー映画としてアカデミー作品賞にノミネートされるという快挙(だって『ダークナイト』も作品賞にはかすってないんですよ)、批評家評価も高い・・・のは、やっぱりこれが「黒人による黒人のための秀逸なヒーロー映画」だからなんだろうな、と思っています。実際、映画に込められたメッセージ性や、構図から見えてくる現実世界への問題意識みたいなものは、自己満足のレベルではなくて、ちゃんと観ていてわかる、感じに放たれているものだと思います。

そこは大いに認めたいところなんですが、この「優れている点」のせいで、この映画が本来抱えているはずである「ヒーロー映画としては脚本が凡」というウィークポイントを「まあいいじゃん」に変えてしまっているところがあるというか。その辺は気になりました。

ということで、単体で見たら75点、シリーズで観たら80点くらいだと思います。


あと5作あるので、残りは今度書きます。

QooQ